PRTR制度とは?PFAS対応の基本と企業に求められる対応

投稿日:2026年9月2日

工場地帯

【この記事のポイント】

  • PRTR制度は、化学物質管理の実態を可視化するための重要な制度
  • PFOS・PFOAは、PRTR制度の対象となるPFASに該当する
  • 対象事業者は届出や廃棄物処理時の情報伝達に注意が必要

 

PRTR制度(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)とは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が事業所から環境中へ排出される量や、廃棄物として事業所外へ移動する量を把握・集計し、その結果を公表する制度です。

対象となる事業者にとって本制度は、法令に基づく届出義務にとどまらず、自社における化学物質の使用・排出実態を体系的に把握し、リスク管理や取扱管理体制の改善を図る契機にもなります。

本記事では、PRTR制度の基本を押さえつつ、PFAS(有機フッ素化合物)との関連性や企業に求められる対応についてわかりやすく解説します。

 

 

PRTR制度とは

PRTR制度は、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、排出・移動の実態を把握し、国・事業者・国民を含む関係者間で情報を共有することを目的とした制度です。

対象事業者から届け出られた情報は、国によって集計・公表され、集計結果や個別事業所のデータはホームページを通じて閲覧することができます。

本制度を通じて、国民を含む全ての関係者で情報を共有し、相互に連携しながら化学物質対策に取り組むことが期待されています。

 

背景にあるのは化管法

化管法(化学物質排出把握管理促進法)は、PRTR制度やSDS制度を通じて、事業者による化学物質の自主的な管理改善を促進することを目的とした法律です。

PRTR制度の対象となる化学物質は、化管法において第一種指定化学物質として定められています。第一種指定化学物質とは、人の健康または生態系に有害なおそれがあり、環境中に広く存在する可能性がある物質で、現在では515物質が指定されています。(※2026年7月時点)

このうち、発がん性や強い生態毒性など、特に高い有害性が懸念される物質などは特定第一種指定化学物質として区分されています。

PRTR制度はこれら第一種指定化学物質について、事業者が排出量・移動量を把握し、国に届け出ることを義務付ける制度です。

また、化学物質管理に関する法律には、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)もあります。化審法は、化学物質の製造・輸入等の段階における審査・規制を目的とした法律であり、排出量・移動量の把握を目的とするPRTR制度とは、規制の対象や管理する段階が異なります。

関連記事:化審法とはどんな法律?役割や化学物質の対象範囲、PFASの分類について

両者はどちらも化学物質管理に関わる制度ですが、それぞれの役割や位置づけを整理し、混同しないように理解することが重要です。

 

PRTRの対象物質と届出の算定対象となる製品

PRTR制度の対象物質

PRTR制度では、排出量・移動量の算定にあたり、対象となる製品にも要件があります。
第一種指定化学物質を1質量%以上、または特定第一種指定化学物質を0.1質量%以上含む製品が対象となります。

ただし、金属板や管などの固形物、密封された状態で使用する製品など、通常の使用状態において対象化学物質が環境中へ排出される可能性が低いと考えられる製品は、例外的に把握・届出の対象外とされています。

把握の対象外となる製品 具体例
対象物質の含有率が少ないもの
(含有率が1質量%未満の製品、特定第一種指定化学物質の場合は0.1質量%未満の製品)
-
固形物(粉状や粒状のものを除く) 金属板や管など
密封された状態で使用する製品 乾電池など
一般消費者用の製品 家庭用洗剤、殺虫剤など
再生資源 金属くず、空き缶など

引用:PRTR制度 対象化学物質|例外的に把握しなくてもよい製品とは|経済産業省

 

対象事業者

PRTR制度の対象事業者は、次の要件を全て満たす事業者とされています。

  • 政令で定められた24種類のいずれかに該当する事業を営んでいること
  • 常時使用する従業員数が21人以上であること
  • 第一種指定化学物質の年間取扱量が1 t以上(特定第一種指定化学物質の場合は0.5t以上)となる事業所を有している、または政令等で定められた特定の施設を設置していること

 

対象業種については、営む事業が指定業種に1つでも該当していれば要件を満たします。一方、どの業種にも該当しない場合は、PRTR制度の届出対象事業者には該当しません。
従業員数は、本社・支社・出張所などを含む全事業所の合計人数で判断されます。年間取扱量は、対象物質ごとの年間製造量と年間使用量を合算して算定するため、要件判定に際しては注意が必要です。

PRTR制度の対象事業者
1 金属鉱業 4 電気業
2 原油・天然ガス鉱業 5 ガス業
3 製造業 6 熱供給業
a 食料品製造業 7 下水道業
b 飲料・たばこ・飼料製造業 8 鉄道業
c 繊維工業 9 倉庫業(農作物を保管する場合又は貯蔵タンクにより気体又は液体を貯蔵する場合に限る。)
d 衣服・その他の繊維製品製造業 10 石油卸売業
e 木材・木製品製造業 11 鉄スクラップ卸売業(*)
(*)自動車用エアコンディショナーに封入された物質を取り扱うものに限る。

f

家具・装備品製造業 12 自動車卸売業(*)
(*)自動車用エアコンディショナーに封入された物質を取り扱うものに限る。
g パルプ・紙・紙加工品製造業 13 燃料小売業
h 出版・印刷・同関連産業 14 洗濯業
i 化学工業 15 写真業
j 石油製品・石炭製品製造業 16 自動車整備業
k プラスチック製品製造業 17 機械修理業
l ゴム製品製造業 18 商品検査業
m なめし革・同製品・毛皮製造業 19 計量証明業
(一般計量証明業を除く。)
n 窯業・土石製品製造業 20 一般廃棄物処理業
(ごみ処分業に限る。)
o 鉄鋼業 21 産業廃棄物処分業(特別管理産業廃棄物処分業を含む。)
p 非鉄金属製造業 22 医療業
q 金属製品製造業 23 高等教育機関(付属施設を含み、人文科学のみに係るものを除く。)
r 一般機械器具製造業 24 自然科学研究所
s 電気機械器具製造業  
t 輸送用機械器具製造業
u 精密機械器具製造業
v 武器製造業
w その他の製造業

 

 

PRTR制度とPFASの関連性

PFAS工場排水サンプル

PFASは、有機フッ素化合物のうち、少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチル基またはメチレン基を含む化学物質群を指します。

PFASの中には、撥水・撥油性や耐熱性・化学的安定性などの性質を持つものがあり、界面活性剤や半導体製造用薬剤など、さまざまな用途で使用されてきました。

一方で、環境や人体への影響が懸念されたことで、一部のPFASはPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の対象物質に指定され、国内においても化審法などに基づく規制や管理が進められています。

ここでは、PRTR制度の対象となるPFASや、同制度におけるPFAS管理の位置づけについて説明します。

 

PRTR制度におけるPFASの対象物質

現在、PRTR制度の対象となるPFASとしては、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が化管法の第一種指定化学物質に指定されています。

PFOSは半導体用の薬剤や泡消火薬剤などに、PFOAは界面活性剤などに使用され、多くの産業分野で活用されてきました。

しかし、いずれも難分解性・高蓄積性・長距離移動性をもつことからPOPs条約の規制対象に指定され、国内では化審法に基づき、現在は製造・輸入が原則禁止されています。

化管法では、PFOSは2008年の政令改正を受けて2010年度把握分から、PFOAは2021年の政令改正を受けて2023年度把握分からPRTR制度の対象物質となりました。

PFOSとPFOAについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。

関連記事:PFAS・PFOS・PFOAの違いとは?物質の特性や使用例について
PFAS PFOS PFOA?

また、化審法ではPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)も第一種特定化学物質に指定されており、2024年以降製造・輸入が原則禁止とされています。

しかし、現時点ではPRTR制度の対象物質には指定されていないため、今後の動向に注視が必要です。

 

PRTR制度におけるPFAS管理の必要性

化審法で規制されている一部のPFASは現在、製造・輸入等が原則禁止されています。しかし、環境中への排出リスクが完全になくなったわけではなく、例えば以下のようなケースが考えられます。

  • 副産物など、製造における非意図的な含有
  • 規制前に製造・輸入・使用された製品の保管や廃棄時の漏洩
  • 代替PFASの使用に伴う把握漏れや、将来的な規制対象拡大への対応リスク

PRTR制度は、対象事業者からの届出をもとに情報を共有する仕組みのため、PFASの排出実態をすべて網羅できるものではありません。

しかし、排出リスクが存在する以上、本制度は汚染が確認された際の原因推定の一助となるほか、事業者による化学物質管理意識の向上を促す点において、PFASの適切な管理に寄与する制度であるといえます。

 

 

米国では200を超えるPFASが報告対象に

米国においても有害物質の排出量の把握・削減に向けた対策を講じており、その代表的な制度として、PRTR制度に類似したTRI(Toxics Release Inventory:米国有害物質排出目録)プログラムがあります。

TRIはEPA(米国環境保護庁)によって運営されており、対象となる有害物質を取り扱う事業者から情報を収集した後、その内容を一般に公開しています。

TRIでは排出量に加えて、廃棄物の削減対策なども報告対象とされており、PFASは2019年12月にTRIの対象物質に追加されました。

その後は段階的に見直しが行われており、現在では206種類のPFASがTRIの報告対象となっています(2026年7月時点)。

TRIについては、下記の記事で詳しく解説しています。

関連記事:TRI(米国有害物質排出目録)とは?企業報告義務と情報公開の重要性
CHEMICAL

 

 

PRTR制度で企業に求められる措置とは

工場内管理作業

 

PRTR制度の対象事業者は、年度ごとに対象物質の排出量・移動量を把握し、事業所ごとに国へ届出を行う必要があります。

ここからは、対象事業者に求められる措置の内容や届出の方法について解説します。

 

届出の内容

国へ届け出る主な内容は以下の2点です。

  • 事業者に関する情報
  • 対象物質ごとの排出量・移動量

 

事業者に関する情報としては「名称や所在地、従業員数、事業が属する業種」などを記載します。また、排出量と移動量では「対象物質ごとに算出した量」に加え、排出先(大気、公共用水域、土壌など)や移動先(産業廃棄物処理業者等)を区分して報告する必要があります。

なお、PRTR制度における移動量とは、対象物質が廃棄物として事業所の外へ移動する量や、下水道へ移動する量を指します。

廃棄を伴わない事業所外への移動や製品としての出荷は、PRTR制度における移動量には含まれないため、算定にあたっては注意が必要です。

 

届出の方法

PRTR制度における届出の主な流れは、以下の通りです。

1 対象事業者に該当するかの確認及び排出量と移動量の算出
2 届出方法の選択と届出作成
3 届出の提出

 

なお、第一種指定化学物質を取り扱う事業者であっても、事業内容や規模などの要件によっては届出対象とならない場合があります。あらかじめ対象要件を確認しておくことが重要です。

届出方法は「電子」「CD-Rなどの磁気ディスク」「書面」の3つがあり、このうち電子による提出が推奨されています。

届出書は事業所ごとに作成し、提出先は事業所が所在する都道府県等の窓口です。

排出量などの算出方法や届出の記入方法については、経済産業省のホームページで「PRTR届出の手引き」や「PRTR排出量等算出マニュアル」が公開されています。

 

PRTR制度には罰則もある

PRTR制度は、事業者からの届出情報を元に国が情報を提供するため、制度に沿った適切な対応が求められます。

化管法には罰則規定が設けられており、排出量・移動量の届出を行わなかった場合や、虚偽の内容を届け出た場合は、20万円以下の過料に処されるとされています。

また、過去には、環境省及び経済産業省が事業者によるPRTR届出の虚偽行為を確認し、過料の適用を求める通知を行った事例もあります。

適切な届出は、正確な情報共有の基盤であり、事業者自身の社会的信頼の確保にも関わるという認識が大切です。

 

産業廃棄物を扱う場合は記載事項に注意

2026年1月1日より、第一種指定化学物質等取扱事業者が、化管法に基づき排出量・移動量の把握対象となる第一種指定化学物質を含む、または付着している産業廃棄物の処理を委託する場合は、委託契約書に対象物質の名称及び量または割合を記載し、委託先へ必要な情報を伝達することが求められるようになりました。

目安となる含有率は、PRTR制度の把握対象製品と同様に、第一種指定化学物質が1質量%以上、特定第一種指定化学物質が0.1質量%以上とされています。

そのため、PRTR制度への対応は排出量などの届出だけでなく、廃棄物処理委託時の記載事項にも関わる点に留意する必要があります。

※廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)施行規則の改正によるもの。2025年4月22日公布、2026年1月1日施行。

 

 

PRTR制度を踏まえた適切な管理と対応が重要

工場での管理作業

PRTR制度は、事業所から排出される化学物質に関する情報を、国・事業者・国民を含む関係者間で共有するための仕組みです。

事業者にとっては法令に基づく義務である一方、制度を正しく理解し、排出実態を可視化することにより、自社の化学物質管理体制を見直す機会にもなります。

PRTR制度の対象となっているPFOS・PFOAを含むPFASについては、国内外で規制や管理の見直しが進んでいます。

2025年5月に開催されたPOPs条約第12回締約国会議(COP12)において、長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩及びLC-PFCA関連物質が、同条約の附属書A(廃絶)に追加されることが決定されました。こうした国際的な規制動向は、今後の国内制度や対象物質の見直しにも影響を与える可能性があります。

将来的な規制強化や対象物質の拡大を見据え、対象物質の把握、適切な届出対応、ならびに廃棄物処理委託時における情報伝達を適切に進めていくことが重要です。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については
こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

PFAS MEDIA TOPに戻る 

記事の監修者

v173f

ユーロフィン日本環境株式会社 ラボラトリー事業部 POPsグループ PFAS・PCBチーム Manager 門田 めぐみ

<経歴>

2008年 大阪女子大学 理学部環境理学科生物科学専攻 卒業
2010年 大阪府立大学大学院 理学系研究科分子科学専攻博士前期課程 修了
生理活性天然物の全合成に関する研究を行う。
卒業後はナガセケムテックス株式会社にて機能性材料の研究開発に従事。その後、2013年より協和発酵キリン株式会社にて医薬品の品質管理業務に携わる。
2016年よりユーロフィン日本環境株式会社に入社し、農薬やPCBなどの有機分析業務に従事。現在はPFAS・PCB分析チームのマネジメントを担当し、各種分析法の導入や運用体制の構築にも取り組んでいる。

関連記事

v031a

GHSの基本的な表示ルールやJISとの関連性、PFASなどの化学物質を扱う企業が理解しておくべき義務と留意点について解説。

v079a

水質汚濁防止法の規制内容やPFAS指定物質への対応策を解説。企業が取るべき実務対策を分かりやすく紹介。

v138a

日本のPFAS規制の最新動向と各省庁の取り組みを解説。環境や健康への影響、今後の対応について詳しく紹介します。

PFAS MEDIA 記事カテゴリ一覧

PFASとはいったい何?なぜニュースになっているの?知見を持った専門家が解説します! 

Eurofinsグループのネットワークを活かし、国内外問わず世界のPFAS動向をお届け

規制動向や分析・対策に関する情報を整理したホワイトペーパーを無料でダウンロードいただけます

PFASの調査や分析方法にはどのような方法があるのか、ユーロフィンで提供可能なサービスについて

国内でも様々な対策法が検討・開発されてきています

PFASを含まない人にも環境にも優しい商品の開発が地球全体で進んでいます

PFASの分析や対策、商品開発などに取り組む方へ多方面からインタビュー

参考資料

PFAS MEDIA

 

規制動向から分析・対策まで、
PFAS対応に関する情報を体系的に提供します。

PFAS分析 お問い合わせ

ユーロフィンのPFAS分析についてはこちらからお問い合わせください。