2026年5月正式発効されたUSP<665>&USP<1665>に関して、最新動向を解説した無料ウェビナーを配信中です。
製薬メーカーや包装デバイスメーカー注目すべき内容をまとめていますので、ぜひご覧ください。
PQRI(Product Quality Research Institute)は、医薬品の品質、製造、規制に関する科学的なアプローチを開発するために、製薬業界、学界、規制機関のメンバーが協力して活動する米国の非営利のコンソーシアムです。
1999年にLeachables and Extractables(L&E)ワーキンググループを設立し、経口吸入薬及び点鼻薬(OINDP:Orally Inhaled and Nasal Drug Products)におけるLeachablesとExtractablesの分析試験と安全性評価の閾値とベストプラクティス(Safety Threshold and Best Practices for Extractables and Leachables in Orally Inhaled and Nasal Drug Products)に関する勧告を米国食品医薬品局(FDA)に提出しました。この勧告は、2006年に公開され、FDAや世界の規制当局に認められました。
その後、2008年にParenteral and Ophthalmic Drug Product Leachables and Extractables(PODP L&E)ワーキンググループを設立し、OINDPのリスクベースのアプローチを注射剤や眼科用医薬品(PODP)に適用しました。このワーキンググループは、投与量、投与期間、患者集団、製品特性などの要因を考慮して、LeachablesのSafety Concern ThresholdとQualification Thresholdを開発しました。
2013年にPODPのためのE&Lの勧告を公表しました。この勧告は、ポリマー材料の抽出試験の結果と、現在の毒性学的認定の方法を用いて評価された600以上の潜在的な溶出物のデータベースに基づいています。
PQRIは、2022年にPODPのためのE&Lの勧告(Safety Thresholds and Best Demonstrated Practices for Extractables and Leachables in Parenteral Drug Products (Intravenous, Subcutaneous, and Intramuscular))を改訂しました。この勧告は、新しいモダリティに関連する要因を考慮し、非経口医薬品(PDP:Parenteral Drug Products)のためのE&Lの安全閾値とベストプラクティスを更新しました。
このようにPQRIは、技術委員会やワーキンググループを通じて、医薬品の品質、安全性、性能を確保するためのプロジェクトに取り組んでいます。
本技術コラムでは、E&L試験を実施する可能性がある医薬品メーカー、医療機器メーカー、包装デバイスメーカーの方の参考ために、重要な以下の2点のPQRIガイドラインの概要をまとめています。
本ガイドラインは、PQRIのLeachables and Extractablesワーキンググループが、経口吸入薬及び点鼻薬(OINDP)におけるLeachablesとExtractablesの分析試験と安全性評価の閾値を科学的に支持する方法について、FDAに提出した推奨事項の文書です。
この文書は、以下の4つの章から構成されています。
それぞれについて、概要をまとめています。
1.ExtractablesとLeachablesの定義と背景
Extractablesは、OINDPの容器施栓系の部品や表面から適切な溶媒や条件で抽出される化合物であり、潜在的なLeachablesと考えられます。
Leachablesは、OINDPの製剤中に容器施栓系の部品から溶出して存在する化合物です。溶出は、製剤やその成分によって促進される場合があります。
ExtractablesとLeachablesの一部は、製品の品質、安全性、有効性に影響を与える可能性があるため、分析と毒性学的な安全性評価が必要です。
Extraction 試験とLeachables 試験は、OINDPの製剤開発の初期段階と後期段階で行われます。
ExtractablesとLeachablesの潜在的な発生源は、OINDPの種類によって異なりますが、金属、エラストマー、プラスチック、ラベルなどの部品や材料に由来するものが多いです。
2.ExtractablesとLeachablesの閾値の根拠
OINDPにおけるLeachablesの安全性評価と安全性確認のため、Safety Concern Threshold (SCT)を0.15 μg/日、Qualification Threshold (QT)を5 μg/日と提案されています。
SCTは、発がん性や非発がん性の毒性学的影響により、安全性確認の目的でLeachables量がそれ以下であれば無視できる閾値と定義されています。
QTは、Leachablesが構造活性相関(SAR)の懸念がない限り、安全性の確認が必要とされない閾値と定義されています。
これらの安全性の閾値は、1日摂取量(μg/日)という絶対的な曝露量で表されますが、分析化学者が利用できるように、製品単位あたりの量(μg/製品)などに換算する必要があります。この換算には、製品の構成情報が必要です。
この換算されたSCTをもとに、分析試験の閾値であるAnalytical Evaluation Threshold (AET)を決定します。AETは、特定のLeachablesやExtractablesの同定と報告が必要となる閾値と定義されています。
AETは、製品の構成や分析手法によって異なります。分析手法には、個々のLeachablesやExtractablesの反応係数の不確実性が含まれるため、この不確実性を考慮してAETを算出する必要があります。
3.ExtractablesとLeachables試験のベストプラクティスの提案
OINDPの容器施栓系の部品の選択や組成に関する情報を入手し、リスク評価を行います。
Controlled Extraction 試験では、複数の溶媒や抽出法、分析手法を用いてExtractablesの定性的・定量的なプロファイルを作成し、AETを適用します。
Leachables 試験では、安定性試験の一環として、複数の条件下で保存した製剤からLeachablesを定性的・定量的に分析し、AETを適用します。
ExtractablesとLeachablesのプロファイルの相関関係を確立し、LeachablesとExtractablesの受入基準を設定します。
ルーチン Extractables 試験では、重要な部品について、Controlled Extraction 試験で開発した分析手法を用いて、Extractablesのプロファイルをモニタリングします。
AET以上のExtractablesやLeachablesは、毒性学者に報告し、リスク評価を行います。リスク評価は、SARや文献レビューから始め、必要に応じて毒性評価試験を行います。
1.Leachablesの閾値の一般原則
Leachablesの閾値は、Safety Concern Threshold(SCT)とQualification Threshold(QT)の2つのレベルで定義されます。
SCTは、Leachablesの1日摂取量が発がん性や非発がん性の毒性学的影響に対して無視できるほど低いレベルを示す閾値です。
QTは、Leachablesの1日摂取量が毒性学的評価を必要としないレベルを示す閾値です。
2.Safety Concern Threshold(SCT)
SCTは、Leachablesの1日摂取量が0.15 μg以下であれば、発がん性の安全上の懸念はないという仮定に基づいています。
この仮定は、食品添加物及び環境化学物質の安全性評価のデータベースから得られた、最小影響量(LOEL:Lowest Observed Effect Level)や無毒性量(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)の分布に基づいています。
SCTは、Leachablesの1日摂取量をμg/dayで表した絶対的な曝露量として定義されます。
3.Qualification Threshold(QT)
QTは、Leachablesの1日摂取量が5 μg以下であれば、構造活性相関(SAR)の懸念がない限り、毒性学的評価を必要としないという仮定に基づいています。
この仮定はLeachablesの混合物、刺激性、子供への曝露などの要因を考慮した、SCTの33倍の安全マージンに基づいています。
QTも、Leachablesの1日摂取量をμg/dayで表した絶対的な曝露量として定義されます。
4.Leachablesの安全性確認プロセス
Leachablesの安全性確認プロセスでは、SCTとQTを用いて、Leachablesの同定と評価のためのディシジョンツリーを提供しています。これは、また、USPやISOの規格も参照しています。
1.容器施栓系の構成要素
構成要素の選択、組成、リスク評価に関する推奨事項が示されています。構成要素の組成や製造過程に関する情報を入手し、潜在的なExtractablesやLeachablesの発生源を特定することが重要です。
2.Controlled Extraction 試験
Controlled Extraction 試験は、構成要素から抽出される可能性のある化合物の種類と量を調べるために行われます。このトピックでは、Controlled Extraction 試験の目的、範囲、方法、分析技術、同定基準、最適化、検証などに関する推奨事項が示されています。
3.Leachables試験とルーチンExtractables試験
Leachables試験は、製品の安定性試験中に発生するLeachablesの種類と量を調べるために行われます。
ルーチンExtractables試験は、構成要素の品質管理のために行われます。このトピックでは、Leachables試験とルーチンExtractables試験の目的、範囲、方法、分析技術、同定基準、相関、検証、受入基準などに関する推奨事項が示されています。
4.分析評価閾値(AET)
AETは、ExtractablesやLeachablesの同定と毒性評価のために分析化学者が使用する閾値です。
AETは、Safety Concern Threshold(SCT)から導出され、分析方法の不確実性を考慮して調整されます。このトピックでは、AETの定義、決定方法、適用方法に関する推奨事項が示されています。
推奨事項の補足資料として以下の記載があります。
付録1: Safety Concern Threshold の単位変換表
この付録では、SCTをOINDPの各種形態に応じて単位を変換した表を示しています。
例えば、MDI(Metered Dose Inhale)の場合はmg/キャニスター、DPI(Dry Powder Inhaler)の場合はmg/ブリスターなどです。これらの表は、AETを算出する際に参考になります。
付録2:Leachablesの例
この付録では、OINDPの各種形態から検出されたLeachablesの例を示しています。
これらの例は、Leachablesの同定や定量に用いられる分析手法や条件、Leachablesの化学構造や性質、Leachablesの起源や生成経路などに関する情報を提供しています。
付録3:Leachablesのリスク評価とSAR分析の例
この付録では、OINDPのLeachablesに対するリスク評価とSAR分析の例を示しています。
この例では、MDIのLeachablesのうち、AET以上のレベルで検出された化合物について、既存の毒性データやSARツールを用いて安全性の評価を行っています。
また、SARツールの利用方法や結果の解釈についても説明されています。
付録4:Controlled Extraction 試験プロトコル
この付録では、OINDPの各種形態に対するControlled Extraction 試験のプロトコルを示しています。これらのプロトコルでは、抽出溶媒や抽出方法、分析手法や条件、データ処理や報告などについて詳細に記述しています。また、実際に行われたControlled Extraction 試験の結果や考察も含まれています。
以上が、Safety Threshold and Best Practices for Extractables and Leachables in Orally Inhaled and Nasal Drug Productsの概要です。
詳しくは、原文をご覧ください。
本ガイドラインは、PQRI PODP(Parenteral and Ophthalmic Drug Product) Leachables and Extractablesワーキンググループが、非経口医薬品(PDP:Parenteral Drug Products)の容器施栓系から溶出する物質(ExtractablesとLeachables)の安全性評価とベストプラクティスに関する推奨事項を提供する文書です。
この文書は、以下の5つの章から構成されています。
それぞれについて、概要をまとめています。
PQRI PODPワーキンググループは、PDPのExtaractablesとLeachablesに関する安全性閾値と分析のベストプラクティスの勧告を発表しました。
ExtaractablesとLeachablesは、容器施栓系から製剤に移行する物質であり、品質や安全性に影響を与える可能性があります。
OINDP(経口吸入薬及び点鼻薬)の推奨に基づいて、PDPのExtaractablesとLeachablesの評価と安全性の確認に適用できる閾値概念とベストプラクティスを提案しました。
PDPの推奨範囲には、プレフィルドシリンジ(PFS)、バイアル又はフレキシブルバッグに入った小容量及び大容量の非経口製剤が含まれ、眼科製剤は別の文書で扱われます。
SCT(Safety Concern Threshold)は、発がん性や非発がん性の毒性影響が無視できるほど低い投与量の閾値であり、PDPの場合は1.5 µg/日とされています。
QT(Qualification Threshold)は、特定のLeachablesに対する安全性の確認を行う必要がない閾値であり、PDPの場合は5 µg/日とされています。
AETは、LeachablesやExtaractablesの同定と報告を開始すべき閾値であり、製剤の特性や分析手法に応じて計算されます。
ExtaractablesとLeachablesの評価には、適切な溶媒、抽出条件、分析手法を用いるべきであり、一次包装などの包装バリアを越えて移行する物質(医薬品のラベル、接着剤、インク由来の物質)も考慮するべきであるとされています。
この章では、PDPのLeachablesに対する安全性評価のための閾値の設定方法と根拠について説明しています。
PDPのLeachablesに対する安全性評価は、OINDPに対してPQRIが開発したSCTの概念を適用できるという仮定に基づいています。
PDPのLeachablesに対するSCTは、1.5 µg/日と提案されています。
これは、OINDPのSCTである0.15 µg/日よりも高い値であるが、PDPの投与量や頻度、患者集団などの要因を考慮した結果とされています。ただし、特殊な化合物(例えば、アフラトキシン類化合物、N-ニトロソ化合物、アルキルアゾキシ化合物など)については、1.5 µg/日よりも低いSCTが必要となる場合があります。
PDPのLeachablesに対するQTは、OINDPのQTである5 µg/日と同じ値とされています。
QTよりも低い投与量のLeachablesは、構造活性相関(SAR)や他の安全性の懸念がない限り、毒性評価の対象とされません。
PDPのLeachablesに対する第三の閾値として、Cramer分類法に基づくシステム毒性に関する閾値を提案することが検討されましたが、十分な科学的根拠が得られなかったため、現時点では推奨できないとされています。
この章では、PDPとその包装システムに関連するExtractablesとLeachablesの分析的評価について、OINDPのベストプラクティスを参考にしながら、推奨事項や実例が示されています。
OINDPとPDPの間には、用量形態、製剤と包装システムの相互作用、製剤と包装システムの接触の状況など、いくつかの重要な違いがあります。これらの違いに応じて、ExtractablesとLeachablesの評価における抽出条件、分析手法、AETの計算、Leachablesの測定などについて、PDPに適したベストプラクティスを提案されています。
材料/部品の特性評価と選択:
PDPの包装システムの材料や部品の特性評価と選択は、ExtractablesとLeachablesのリスクを低減するための重要なステップです。材料や部品の種類、原材料、製造プロセス、規格、規制要件などに基づいて、適切な特性評価と選択を行う必要があります。
特性評価試験:
PDPの包装システムに関連するExtractablesの特性評価試験には、材料/部品の特性評価試験、完成部品の特性評価試験、完全な包装システムの特性評価試験の3種類があります。
これらの試験では、適切な抽出溶媒、抽出時間、抽出温度、抽出技術、試料対溶媒比などの抽出条件を考慮する必要があります。また、複数の分析手法を用いて、Extractablesの同定と定量を行う必要があります。
PDPのLeachables評価:
PDPのLeachables評価では、使用条件下でのLeachablesのレベルを測定し、Extractablesとの相関関係を確立する必要があります。
Leachables評価においては、AETの計算、分析手法の選択、サンプル調製、Leachablesの同定と定量、Leachablesの資格付けなどについて、PDPの種類や特性に応じたベストプラクティスを適用する必要があります。
生物学的製剤は、化学合成製剤とは異なる特性を持ち、ExtractablesとLeachablesの影響を受けやすいです。
生物学的製剤の品質に関する要因として、生物活性、有効性、安全性、製剤の複雑さ、投与経路、投与量、投与期間などが挙げられます。
生物学的製剤の製造や包装に使用される部品や材料は、適切な選択、評価、管理が必要です。
ExtractablesとLeachablesの評価には、製剤との相互作用、製品の劣化、化学的修飾、凝集、免疫誘導活性などの影響を考慮する必要があります。
ExtractablesとLeachablesの評価には、加速劣化条件や安定性試験条件下での製品の分析が含まれるべきであるとされています。
ExtractablesとLeachablesの評価には、製品の複雑さや包装システムの種類に応じて、AET、抽出条件、抽出溶媒、分析方法などを正当化し、規制当局と事前に協議することが望ましいとされています。
この章では、ExtractablesとLeachablesに関するデータや用語がまとめられています。
付録1: データベースに含まれるExtractablesとLeachablesのリスト
この付録では、PQRI PODP L&Eワーキンググループが収集した、ポリマー材料から抽出された化合物や、モデルPDPシステムから検出された可能性のあるLeachablesのリストを示しています。
リストには、化合物の名称、CAS番号、分子量、構造式、及び毒性評価の結果が含まれています。
リストは、毒性評価の優先順位付けに基づいて、特別なケースの化合物、高リスクの化合物、中リスクの化合物、低リスクの化合物の4つのカテゴリに分類されています。
付録2: PDEの確立方法
この付録では、Leachablesの毒性評価に用いられるPDE(許容一日暴露量)の算出方法を説明しています。
PDEは、化合物の毒性データから導出されるNOAEL(無毒性量)に、さまざまな修正係数を乗じることで求められます。
修正係数には、動物種間の差異、人間個体間の差異、研究期間の差異、臓器毒性の重要度、データの信頼性などを考慮したものがあります。
PDEは、Leachablesの安全性限界を設定するために、SCTやAETの算出に用いられます。
付録3: PODPワーキンググループによる出版物のリンク
この付録では、PQRI PODP L&Eワーキンググループが発表した、ExtractablesとLeachablesに関する論文やプレゼンテーションのリンクを示しています。
これらの出版物は、PDPのExtractablesとLeachablesの評価における最新の科学的知見やベストプラクティスを提供しています。
リンクは、PQRIのウェブサイトやPDAジャーナルなどの外部のソースに繋がっています。
付録4: 略語と頭字語の用語集
この付録では、本文中で使用されている略語と頭字語の意味を説明しています。
用語集には、ExtractablesとLeachablesに関連する用語や、PDPの種類や投与経路、毒性評価の用語などが含まれています。
用語集は、アルファベット順に並べられており、簡潔に定義されています。
以上が、Safety Thresholds and Best Demonstrated Practices for Extractables and Leachables in Parenteral Drug Products (Intravenous, Subcutaneous, and Intramuscular)の概要です。
詳しくは、原文をご覧ください。
米国PQRI(Product Quality Research Institute)ガイドラインについて、概要をまとめました。
E&L試験では、PQRIガイドラインが重要なため、これからE&L試験の実施をされる方は、知っておいて損はありません。
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